症状で入口を分ける

同じ「起動しない」でも、画面に何が起きるかで疑う場所が変わる。手を動かす前に、自分がどれに当てはまるかを決めておくと無駄が減る。

エラーメッセージが出るなら最短経路がある。表示された文言をそのまま検索すれば、ランタイム不足なのかファイル破損なのかがほぼ判別できる。閉じる前にスクリーンショットを撮っておく。

一瞬ウィンドウが出て消えるなら、ゲーム本体は起動していて描画の初期化あたりで落ちている可能性が高い。GPUドライバ、DirectX、シェーダーキャッシュを扱う段階が本命になる。

Steamの「プレイ」ボタンが数秒で緑(プレイ可能)に戻るなら、プロセスがほぼ即座に終了している。アンチチートや外部ランチャーの初期化失敗、権限、ファイル破損が多い。

黒画面のまま固まるなら、落ちているのではなく別の解像度やリフレッシュレートで描画している可能性がある。Alt+Enterでウィンドウ化を試す。

以下は手間が少なく可能性の高い順に並べてある。上から試し、各段階の終わりにある分岐に従う。なお、PCの構成やドライバのバージョンによって結果は変わる。ここに書いた手順が自分の環境でそのまま当てはまるとは限らない点は先に断っておく。

1. PCとSteamを再起動する

最初にやるのはPC全体の再起動と、Steamクライアントの終了・再起動。効かなそうに見えて実際によく直る。ドライバ更新後に再起動していない、Steamが自己更新の途中で止まっている、前回のゲームプロセスが終了しきらず残っている、といった状態はどれも起動失敗の原因になる。

Steamを閉じるときはウィンドウの×ボタンではなく、メニューから完全に終了させる。タスクトレイに残っていることがあるためだ。再起動後、Steamが更新を始めたらそれが原因だった可能性がある。終わるまで待ってからもう一度起動する。

分岐:ここで直れば終わり。変わらなければ次へ。なお、Windows Updateの適用待ちが溜まっている場合も先に片付けておく。

2. ゲームファイルの整合性を確認する

ダウンロード中の中断や、ストレージの不調でファイルが壊れると起動しなくなる。Steamのライブラリでタイトルを右クリックし、プロパティ内の「インストール済みファイル」タブ(古いバージョンでは「ローカルファイル」)から「ゲームファイルの整合性を確認」を実行する。破損部分だけが再取得される。

実行時間は容量次第で数分から数十分。終了後に「1個のファイルの取得に失敗しました」と出ることがあるが、これはアンチチートや設定ファイルなど検証対象外のものを指す表示で、多くの場合は異常ではない。

分岐:大量のファイルが再取得されたなら、原因はファイル破損だった可能性が高い。ただし繰り返し破損するならストレージ側を疑う。同じタイトルで何度も整合性チェックに引っかかる、他のアプリでも読み込みエラーが出るという場合は、SSDやHDDの健康状態を確認したほうがいい。

3. オーバーレイ・MOD・起動オプションを外す

ゲーム本体ではなく、上に乗っているものが原因のケースは多い。ここは切り分けが早いので優先度が高い。

オーバーレイを一時的に切る

Steamオーバーレイは、プロパティの「一般」にある「ゲーム中にSteamオーバーレイを有効にする」をオフにできる。加えて、Xbox Game Bar、Discord、NVIDIA app(旧GeForce Experience)、AMD Software、MSI Afterburner/RivaTuner、配信ソフトのフックなども疑う。これらはゲームの描画に割り込むため、バージョンの組み合わせによっては起動直後の落ちを引き起こす。一度に全部切って、直ったら一つずつ戻す。

MODと起動オプション

MODを入れているなら、ゲーム本体の更新でMODが非対応になった可能性を最初に考える。MOD管理ツールを使っているならプロファイルを無効化し、素の状態で起動するか確かめる。手動導入なら、整合性チェックで本体ファイルが元に戻ることも覚えておく。

起動オプションはプロパティの「一般」から確認できる。過去に自分で入れたもの、あるいは掲示板から貼り付けたものが残っていないか見る。空欄にして試すのが基本。逆に、DirectX 12で落ちるタイトルにDirectX 11指定のオプション(-dx11など、対応するかはタイトルによる)を渡すと動く場合もある。使えるオプションはゲームごとに違うので、公式のサポートページで確認する。

分岐:オーバーレイを切って直ったなら、そのソフトを最新にするか、当該ゲームだけ除外設定にする。

4. GPUドライバとランタイムを整える

「一瞬ウィンドウが出て消える」「グラフィックデバイスの初期化に失敗」といった症状はこの段階が本命になる。

GPUドライバは、上書きではなくクリーンインストールを選ぶ。NVIDIA appやAMD Softwareのインストーラーにクリーンインストールの項目がある。最新版が常に正解とは限らない点にも注意したい。ドライバを更新した直後から落ちるようになったなら、一つ前のバージョンに戻して切り分ける。

ランタイム不足は、VCRUNTIME140.dll が見つかりませんのような明示的なエラーで分かることが多い。多くのタイトルはインストールフォルダ内の_CommonRedistにDirectXとVisual C++再頒布可能パッケージの導入ファイルを同梱している。ここから手動で入れ直せる。フォルダはSteamの「インストール済みファイル」から「参照」でたどれる。

ノートPCで、内蔵GPUのほうで起動してしまい落ちるケースもある。Windowsの設定からシステム、ディスプレイ、グラフィックと進み、該当の実行ファイルに高パフォーマンスGPUを指定する。

分岐:エラーの文言にDLL名が出ているならランタイム側、デバイスやd3dという語が出ているならGPU側と考える。

5. 常駐ソフト・オーバークロック・アンチチートの競合を疑う

ここからは切り分けの手間が増える。上の段階で直らなかった場合に進む。

セキュリティソフトがゲームやアンチチートの実行ファイルを止めていることがある。一時的に保護を切って試すか、ゲームのインストールフォルダを除外設定に加える。Windows標準のコア分離(メモリ整合性)が原因になる事例もある。

CPUやメモリをオーバークロックしているなら、定格に戻して試す。メモリのXMP/EXPOを有効にしているだけでも、他のアプリでは問題なくゲームだけが落ちることがある。負荷のかかり方が違うためだ。一度オフにして再現するか確かめる。

Easy Anti-CheatやBattlEyeを使うタイトルで、プレイボタンがすぐ緑に戻るなら、アンチチートの導入に失敗している。多くの場合、ゲームのインストールフォルダ内に修復用のインストーラー(EasyAntiCheat_Setup.exeなど)が置かれている。Steamを終了した状態で管理者として実行し、対象タイトルを修復する。

6. 設定ファイルとシェーダーキャッシュをリセットする

解像度やグラフィック設定を書いた設定ファイルが壊れると、起動直後に落ちるようになる。設定ファイルはドキュメント\My Games配下や%LOCALAPPDATA%配下に置かれることが多い。削除する前に必ず別の場所へ退避させる。セーブデータが同じフォルダにある場合があるためだ。

Steamクラウドを使っているタイトルでは、消してもクラウドから戻ってくることがある。プロパティの「一般」でクラウド同期を一時的にオフにしてから作業する。

シェーダーキャッシュは、Steamの設定内「ダウンロード」にあるシェーダー事前キャッシュの項目から扱える。GPU側のキャッシュを消したい場合は、Windowsのディスク クリーンアップで「DirectX シェーダー キャッシュ」を選ぶのが手軽で安全だ。消えても次回起動時に作り直されるだけなので、失うものはない。あわせて、Steam設定のダウンロード項目にある「ダウンロードキャッシュを削除」も試す価値がある。

直らないときに集める情報

ここまでで直らなければ、原因を自分で当てるより、情報を集めて人に見せたほうが早い。

Windowsのイベントビューアーを開き、Windowsログのアプリケーションを見る。落ちた時刻に「アプリケーション エラー」が記録されていれば、落ちたモジュール名(nvwgf2umx.dllならGPUドライバ、といった具合)が分かる。これは検索する上で強い手がかりになる。

ゲーム側のログも探す。Unreal Engine製なら%LOCALAPPDATA%配下のゲームフォルダ内Saved\Logsに、Unity製なら%USERPROFILE%\AppData\LocalLow配下にPlayer.logが置かれるのが一般的だ。末尾数十行に落ちた理由が書かれていることが多い。

集まったら、Steamのサポート(help.steampowered.com)か、そのゲームの公式サポート窓口・公式Discordに報告する。伝えるべきは、症状(どの時点で落ちるか)、エラーの原文、OSとGPUとドライバのバージョン、すでに試した手順の四つ。試した手順を書くと、同じ提案を繰り返されずに済む。

どこで見切りをつけるか

判断の基準は二つある。一つは、同じタイトルが他の人の環境で普通に動いているかどうか。動いているならPC側の問題なので、ドライバとランタイム、常駐ソフトを疑い続ける価値がある。もう一つは、直近のアップデート後に始まったかどうか。ゲーム本体やドライバの更新直後から発生したなら、こちらでできることは限られる。公式のアナウンスと修正パッチを待つのが結果的に早い。

購入直後でどうしても起動しないなら、Steamの返金申請という選択肢がある。申請の条件と手順は変わることがあるため、Steamのサポートページで現在の条件を確認してから判断してほしい。