割引率はパブリッシャーが決め、開催日程はValveが決める

Steamの割引率を設定するのは、そのタイトルを販売しているパブリッシャーまたは開発者だ。ValveはSteamworks(開発者向けの管理画面)で割引を入力する仕組みを用意しているだけで、50%引きにするか75%引きにするかを決めるのは販売元になる。同じジャンル・同じ発売時期の作品でも値引き幅がばらつくのは、判断する主体が作品ごとに違うためだ。

一方、いつ割引を出せるかにはValve側のルールがある。サマーセールやウィンターセールのような全体セールは、開催期間がValveから事前に開発者へ告知され、参加するパブリッシャーがその日程に合わせて割引を設定する。特定ジャンルやパブリッシャーを集めたテーマ別セールも同様で、参加するには開催側の枠に入る必要がある。セールによっては最低割引率などの参加条件が付くこともある。

割引は開始前に設定しておくもので、期間の途中で割引率を上げ下げする運用は基本的にできない。「セール終盤まで待てばもう一段安くなる」という買い方が成立しにくいのはこのためだ。

ディスカウント・クールダウン: 次の割引まで約30日

Valveは割引を出せる間隔にも制限を設けている。おおまかに言えば、ある割引が終了してから次の割引を始めるまでに30日程度を空ける必要がある。ただし全体セールはこの制限の例外として扱われる。6月のサマーセールで割引された作品が7月の単発セールには登場せず、それでも11月のオータムセールには並ぶ、という現象はこの構造から生まれる。

定価の変更と割引の間にも同種の待機期間がある。値上げした直後に割引を出したり、割引が終わった直後に値上げしたりして、実質的な値上げを割引の表示で覆い隠すような運用ができないようになっている。細かい条件はValveが開発者向けドキュメントで随時更新しているため、日数は目安として捉えてほしい。

定価そのものの改定と、セール後に「値上がりして見える」ケース

セールが終われば価格は割引前の定価に戻る。それでも以前より高く感じるなら、多くの場合は定価そのものが改定されている。定価の変更はパブリッシャーの権限で行われ、大型アップデートや追加コンテンツの実装、販売構成の変更、後述する通貨別推奨価格の更新などがきっかけになる。

逆に定価が下がることもある。発売から年数が経った作品が定価を引き下げれば、以後は同じ「50%引き」でも支払額が下がる。過去のセールで見た金額をそのまま基準にすると判断を誤りやすい。

日本円価格の見直しと地域価格

Steamは国・地域ごとに通貨と価格を設定できる。日本では日本円で表示されるが、この金額は米ドル価格をレートで自動換算したものではなく、パブリッシャーが日本円建てで設定した固定の値だ。ValveはSteamworks上で通貨ごとの推奨価格表を提示しており、為替が大きく動くとこの表が更新される。パブリッシャーが更新後の表に合わせると、海外の価格が据え置きのまま日本円価格だけが改定される。円安が進んだ時期に日本円価格の引き上げが相次いだのは、この仕組みによる。

安い地域の価格で買うためにVPNなどで国設定を偽装する行為は、Steamの利用規約に反する。アカウントの国設定は登録した支払い手段に紐づくため、正規の手順では自由に切り替えられない。

ウィッシュリスト通知でわかること、わからないこと

ウィッシュリストに登録した作品が割引を開始すると、Steamから通知が届く。メール、ブラウザ、モバイルアプリのどれで受け取るかはアカウントの通知設定で変更できる。発売前の作品なら、リリース時にも通知が来る。

ただし通知が伝えるのは「今、割引が始まった」ことだけだ。その割引が過去と比べて安いのかどうかは含まれない。通知は割引開始の時点で送られるため、開催中の価格の推移を追う用途にも向かない。

過去最安値はSteam本体では調べられない

Steamストアには価格履歴を表示する機能がない。過去の割引率や最安値を確認したい場合は、Steamの公開データを集計している外部サイトを使うのが一般的で、SteamDBやIsThereAnyDealが広く使われている。いずれもValveの公式サービスではないため、表示は参考値として扱いたい。

履歴を見るときは、金額と割引率を切り分けて考える。定価が改定されていると、過去最安の金額と過去最大の割引率は一致しない。「過去最大は75%引き」でも、その後に定価が上がっていれば今回の75%引きのほうが高くつく。逆に定価が下がっていれば、50%引きで過去最安を下回ることもある。

買った直後に値下がりしたときの選択肢

Steamに差額を返金する制度はない。購入後に値下がりした場合の実務的な対処は、通常の返金条件を満たしているうちに返金を申請し、割引価格で買い直すという流れになる。

返金の条件は、購入から14日以内であること、かつプレイ時間が2時間未満であることだ。両方を満たす必要があり、片方でも外れると自動的な承認の対象からは外れる。条件を外れていてもサポートへの申請自体は可能で、個別に判断される。予約購入はリリース前ならプレイ時間に関係なく返金でき、返金先はSteamウォレットか元の支払い方法から選べる。

なお、返金を繰り返した場合にValveが返金機能の利用を制限することがある、と公式に説明されている。価格差を狙って日常的に使う前提の仕組みではない。条件と最新の記載はSteamの返金ポリシーで確認してほしい。また価格や在庫の扱いはストア側の変更が速いため、金額はいずれも購入時点でストアの表示を確認すること。

購入前に確認する三点

判断材料として確認する価値があるのは三点ある。第一に、その割引率が過去の水準に対してどの位置にあるか。外部サイトの履歴で、割引率と実額の両方を見る。第二に、直近で定価や日本円価格が改定されていないか。改定の直後は、同じ割引率でも過去のセールより支払額が増える。第三に、次の全体セールまでの期間。クールダウンがあるため、単発セールを逃しても全体セールでは再び割引される可能性が高い一方、全体セール中の機会を逃すと次まで1か月以上空くことがある。

急いで決めなければならない場面は、実際にはそれほど多くない。返金条件が残る14日間は、買ったあとで判断をやり直すための猶予としても使える。迷ったら、その猶予の内側で結論を出せるかどうかを基準にすればいい。