アップスケーリングは低い解像度で描いた映像を出力解像度へ引き伸ばす技術

DLSS・FSR・XeSSは、同じ発想でGPUの負荷を下げる。ゲームを出力解像度より低い解像度で描画し、その映像を出力解像度まで拡大して表示する。1920×1080で描いた映像を3840×2160として出力すれば、描画するピクセル数は4分の1で済む。

単純な拡大と違うのは、前のフレームの情報を使う点だ。カメラや物体の動きを表す情報(モーションベクター)をゲーム側から受け取り、複数のフレームにまたがって蓄積したサンプルを合成する。このため静かな場面ほど精度が高く、激しく動く場面ほど破綻しやすい。3社の技術は合成アルゴリズムと動作条件が違うだけで、目的と大枠は共通している。

3種類の違いは動作するGPUの範囲

DLSS(NVIDIA)

GeForce RTX専用で、RTX 20シリーズ以降に搭載されたTensorコアを使う。他社GPUでは動作しない。DLSS 4では新しいモデル(Transformerベース)が導入され、超解像の部分はRTX 20シリーズ以降でも利用できる。

FSR(AMD)

AMDが開発しているが、FSR 3までは特定のハードウェアに依存しない実装で、GeForceやIntel Arcでも動作する。DLSSが使えない環境の受け皿になりやすい。一方、機械学習ベースのFSR 4はRadeon RX 9000シリーズ(RDNA 4)を前提とする。

XeSS(Intel)

Intel Arcでは専用命令(XMX)を使う経路で動き、他社GPUではより負荷の高い互換経路(DP4a)で動く。同じXeSSでもArcとそれ以外で画質と処理コストが変わる。

複数が選べる環境なら、実際に切り替えて見比べるのが早い。同じゲームでも組み込まれているバージョンによって結果が変わるため、他人の評価がそのまま当てはまるとは限らない。

Quality・Balanced・Performanceは内部解像度の倍率を指す

画質モードは「どこまで低い解像度で描くか」の設定だ。DLSSとFSRでは縦横それぞれ、Qualityが約67%、Balancedが約58%、Performanceが50%、Ultra Performanceが約33%にあたる。XeSSはモード名と倍率がやや異なるが、考え方は同じだ。

モード倍率(縦横)4K出力時の内部解像度1080p出力時の内部解像度
Quality約67%約2560×1440約1280×720
Balanced約58%約2227×1253約1114×626
Performance50%1920×1080960×540
Ultra Performance約33%約1280×720約640×360

重要なのは、同じモード名でも出力解像度によって中身がまったく違うことだ。4KのPerformanceは内部1080pなので情報量に余裕があり、破綻が目立ちにくい。1080p出力のPerformanceは内部540pになり、文字や細い線が崩れる。1080pではQualityより下は実用が難しい場面が多く、4Kなら積極的に下げられる。「アップスケーリングは高解像度ほど有利」と言われるのはこの構造による。

ネイティブとの違いは解像度そのものではなく破綻の出方

アップスケーリングが常にネイティブ解像度より劣るとは限らない。複数フレームの情報を蓄積するため、遠景の細かい模様やフェンスの網目などは、ネイティブ+従来のアンチエイリアス(TAA)より安定して見える場合がある。

代わりに固有の副作用が出る。動く物体の後ろに残像が残る(ゴースト)、細いオブジェクトや粒子エフェクトがちらつく、水面や透過表現のディテールが甘くなる、といった症状だ。いずれも動いている最中に現れるため、静止画のスクリーンショット比較では気づきにくい。判断するときは実際にカメラを振って確かめる。

負荷は下げずに画質だけ整えたい場合は、DLAA、FSR Native AA、XeSS Native AAといった設定を使う。内部解像度を出力解像度と同じにしたまま同じ合成処理をかけるもので、GPUに余裕があるときの選択肢になる。

フレーム生成でfpsが上がっても操作が軽くならない理由

フレーム生成は、GPUが実際に描いた2枚のフレームの間に、推定した中間フレームを挿入する。表示上のfpsはおおむね倍前後になるが、増えた分のフレームはプレイヤーの入力を反映していない。

遅延が増えるのは表示の順序が変わるためだ。フレームAとBの中間を作るには、Bが描き終わっている必要がある。つまりBはすぐには表示されず、生成フレームを挟んだあとに表示される。この保持のぶんだけ、操作から画面反映までの時間が伸びる。表示が120fpsでも、入力への反応は元の60fpsのときより鈍い。これが「数値は上がったのに重く感じる」の正体だ。

目安として、フレーム生成をオンにする前の時点で60fps前後は確保しておきたい。30fpsから60fps表示にしても遅延は30fps相当のまま残り、生成フレームの粗も目立つ。NVIDIA ReflexやAMDのAnti-Lagのような低遅延機能は必ず併用する。多くのタイトルではフレーム生成を有効にすると自動でオンになる。

対戦FPSや格闘ゲームのように入力の速さが結果を左右するジャンルでは、フレーム生成は見送るほうが無難だ。逆にシングルプレイのアクションやシミュレーション、フライトものでは、滑らかさの利点が遅延の不利を上回ることが多い。

自分のGPUで何が使えるかの判断

ハードウェア側の対応は世代でほぼ決まる。執筆時点でのおおまかな整理は次の通り。

GPU超解像フレーム生成
GeForce RTX 20/30DLSS・FSR・XeSSDLSSのものは非対応。FSR 3系を使う
GeForce RTX 40DLSS・FSR・XeSSDLSSフレーム生成が利用可
GeForce RTX 50DLSS・FSR・XeSS複数枚を挿入するマルチフレーム生成に対応
GeForce GTX 10/16FSR・XeSS(互換経路)実装により一部可。負荷は重い
Radeon RX 6000/7000FSR・XeSS(互換経路)FSR 3系、ドライバ側の機能
Radeon RX 9000FSR 4を含むFSR全般FSR 3系以降
Intel ArcXeSS(XMX経路)・FSRXeSS 2世代の機能。対応世代を要確認

この表はGPU側の話であり、実際に選べるかはゲームごとの実装に依存する。ゲーム内のグラフィック設定にその項目が出るかどうかが最終的な答えになる。対応範囲はドライバ更新やゲーム側のアップデートで広がるため、NVIDIAAMDIntelの公式ページで最新の対応状況を確認したい。

ゲーム内設定で混同しやすい項目

解像度スケール(レンダースケール)は、アップスケーラーとは別に内部解像度を上下させる設定だ。DLSS等を有効にすると無効化される実装が多いが、二重に効いて想定より低い解像度になる場合もある。どちらか一方に任せ、両方は触らない。

シャープネスは、アップスケーリング後のぼやけを補正する目的で併設されることが多い。上げすぎると輪郭に白い縁が出て、かえって不自然になる。既定値から少しずつ動かす。

動的解像度(Dynamic Resolution)は、目標フレームレートを保つために内部解像度を自動で変動させる仕組みだ。アップスケーリングと併用できる実装もあるが、場面ごとに画質が変わるため比較の基準が作れなくなる。設定を詰める間はオフにしておく。

垂直同期とフレームレート上限は、フレーム生成と噛み合わないことがある。上限を設けると生成後のfpsがそこで頭打ちになり、元の描画fpsが半分以下まで落ちる場合がある。挙動はゲームによって異なるので、フレーム生成を試すときは一度上限を外して確認する。

VRAMにも注意がいる。フレーム生成は追加のメモリを消費するため、8GB前後のGPUで高解像度テクスチャや高いレイトレーシング設定と組み合わせると、fpsは高いのに一定間隔で引っかかる、という状態になりやすい。

設定を詰める順番

まずアップスケーリングをオフのまま、影・反射・テクスチャなどの品質設定を決める。ここで目標fpsに対してどれだけ足りないかが分かる。次にアップスケーラーをQualityで有効にし、余裕を見る。届かなければBalanced、Performanceと段階的に下げる。1080p出力ならQualityまで、1440pならBalanceまで、4KならPerformanceまでが実用範囲の目安になる。フレーム生成は最後に足す。この時点で60fps以上出ているなら試し、操作感が悪化していないか実際に動かして確かめる。

判断の基準は平均fpsの数値ではなく、自分が遊ぶジャンルでの操作感に置く。ベンチマークのスコアが伸びても、狙いを合わせにくくなったなら、その設定は合っていない。ここに書いた内容は、GPU・ドライバ・ゲームのバージョンによって結果が変わる。最終的には、遊ぶタイトルで数分ずつ切り替えて比べるのが最も確実な方法になる。