判断基準:手軽さ、画質と遅延、外出先からの接続
どれを選ぶかは、まず何を一番重視するかで決まります。手軽さを重視するならSteam Remote Playです。Steamがあればすぐに使えます。画質と遅延を詰めたい、あるいはHDRで遊びたいならMoonlight+Sunshineです。外出先から設定少なめでつなぎたいならParsecです。Steam Remote Playも外出先から使えます。ただし、遊ぶゲームがSteam中心かどうかで使い勝手が変わります。
3つとも仕組みは同じです。ゲームを動かすPC(ホスト)が映像を圧縮して送り、手元の端末(クライアント)が操作を送り返します。体感の差は、主に圧縮の方式、対応端末、接続経路の違いから生まれます。また、どれを使っても結果はネットワーク環境に大きく左右されます。
6つの観点で比較
| 観点 | Steam Remote Play | Moonlight+Sunshine | Parsec |
|---|---|---|---|
| 遅延と画質 | 良好。細かい調整はしにくい | 3つの中で最も詰めやすい | 低遅延。画質は帯域次第 |
| 対応端末 | PC、Steam Deck、スマホ、タブレット、一部テレビ機器 | 非常に幅広い | PC、Android、ブラウザ |
| 設定の手間 | ほぼ不要 | 多い | 少ない(アカウントが必要) |
| Steam以外のゲーム | 非Steamゲームとして追加すれば一部可能 | デスクトップ全体を扱える | デスクトップ全体を扱える |
| HDRと高fps | 限定的 | HDR、高fpsとも対応 | 高fpsは可。HDRは非対応 |
| 外出先からの接続 | 可能 | VPNかポート開放が必要 | 可能(回線によっては失敗する) |
遅延と画質
Moonlight+Sunshineはコーデック(映像の圧縮方式)を選べます。H.264、HEVC、AV1から選び、ビットレートも細かく指定できます。GPUとクライアントの両方が対応していれば、同じ帯域でもより高い画質を狙えます。Parsecは低遅延を重視した設計で、操作の反応がよいと評価されています。Steam Remote Playは詳細設定でHEVCや帯域の上限を指定できます。ただし調整できる範囲はMoonlightより狭くなります。
対応する端末
Steam Remote PlayはSteam Linkアプリで受けます。Steam LinkアプリはAndroid、iOS/iPadOS、Apple TV、Meta Questなどで使えます。別のPCやSteam DeckではSteamクライアントがそのまま受け手になります。Moonlightはクライアントの対応範囲が最も広く、Windows、macOS、Linux、Android、iOS、Apple TVに加え、Raspberry PiやSteam Deckでも動きます。ParsecのクライアントはWindows、macOS、Linux、Android、ブラウザです。執筆時点では、iPhoneやiPadで個人向けに使えるParsecアプリはありません。
設定の手間
Steam Remote Playは、ホストとクライアントで同じSteamアカウントにログインするだけで使えます。Parsecは両方にアプリを入れ、Parsecアカウントでログインします。Moonlight+Sunshineは、ホストにSunshineを入れ、ブラウザで管理画面を開いてPINでペアリング(機器同士の登録)します。配信するアプリの登録や、モニターをつないでいないホストで使うための仮想ディスプレイの用意も自分で行います。なお、以前はNVIDIA GeForce Experienceの配信機能(GameStream)をホストとして使えましたが、この機能は2023年に終了しました。現在はSunshineがホストの主な選択肢です。
Steam以外のゲームを扱えるか
MoonlightとParsecはデスクトップ全体を送れるので、ランチャーの種類を問いません。Epic Games、GOG、Xboxアプリ、エミュレーターも同じように扱えます。Steam Remote Playでは、Steam以外のゲームを「非Steamゲーム」としてライブラリに追加すれば起動できることがあります。ただしランチャーを経由するゲームでは、画面が切り替わらないなどの問題が起きやすくなります。
HDRと高fps
Moonlight+Sunshineは10bitのHEVCかAV1を使うHDR配信に対応しています。120fps以上の高fpsも扱えます。HDRを使うには、ホストのディスプレイ設定とクライアント側の画面の両方がHDRに対応している必要があります。Parsecは高fpsに対応しますが、執筆時点で個人向けにHDR配信はできません。Steam Remote Playはクライアントによって設定できる上限が異なり、HDRや高fpsを安定して使えるとは言いにくい状況です。
外出先からの接続
Steam Remote PlayとParsecは、ルーターの設定を変えなくても外から接続できることが多いです。Moonlightには中継サーバーがないため、ルーターのポート開放か、TailscaleなどのVPN(自宅のネットワークに外から安全に入る仕組み)が必要です。日本の光回線で多いIPv6接続方式(IPv4 over IPv6)では、ポート開放ができない、あるいは使えるポートが制限される場合があります。その場合はVPNを使うのが現実的です。
それぞれの弱点
Steam Remote Playは画質の調整幅が狭く、Steam以外のゲームでは安定しません。うまくいかないときに原因を調べる手段も限られます。
Moonlight+Sunshineは最初の設定に手間がかかります。外から使うにはネットワークの知識も必要です。マイク音声をクライアントからホストへ送る機能がないため、ボイスチャットは別の手段で行う必要があります。
Parsecはアカウントが必須です。HDRは使えず、iPhoneやiPadのアプリもありません。ホストに使えるのはWindowsとmacOSだけです。厳しいNAT(ルーターのアドレス変換方式)の回線では接続に失敗することがあり、中継機能は有料プランの機能です。プランの内容と価格は変わることがあるので、公式サイトで確認してください。
用途とネットワーク環境ごとの選び方
Steamのゲームを家のテレビやSteam Deckで遊ぶだけなら、Steam Remote Playを最初に試してください。追加でインストールするものがなく、不満が出てから乗り換えても損はありません。
ホストPCを有線LANでつなぎ、クライアントが5GHz帯かWi-Fi 6以降の無線か有線で接続できるなら、Moonlight+Sunshineで画質と遅延の差がはっきり出ます。HDRディスプレイや120Hzのタブレットを持っている人、Steam以外のゲームが多い人にも向いています。
外出先から遊ぶことが多く、手元の端末がPCかAndroidなら、Parsecが最も簡単です。外出先で使う端末がiPhoneやiPadなら、Steam Remote Playか、Tailscaleと組み合わせたMoonlightが候補になります。外出先から遊ぶときは、どの手段でも自宅回線の上り速度と移動先の回線品質が限界を決めます。
迷う場合は、まずSteam Remote Playを家の中で試してください。そのうえで、画質に不満があればMoonlight+Sunshine、外からつながらなければParsecを試すと、どの観点で困っているかがはっきりします。