ティアリングとスタッタリングは原因が違う

ティアリングは、画面の一部に横方向の裂け目が入り、上下で絵がずれて見える現象です。モニターは画面を上から順に書き換えます。書き換えの途中でGPUが次のフレームを送ると、上半分が古いフレーム、下半分が新しいフレームのまま表示されます。視点を横にすばやく振ると目立ちます。

スタッタリングは、映像が引っかかるようにカクつく現象です。フレームが表示される間隔が不揃いなときに起きます。平均60fpsでも、表示間隔が16ms、33ms、16msとばらつけば、動きは滑らかに見えません。

同期の設定で抑えられるのは、ティアリングと、同期の仕組みが原因のスタッタリングです。シェーダーの準備やデータの読み込みで起きるカクつきは、同期の設定では直りません。この2種類を区別できないと、関係のない設定を延々と変えることになります。

リフレッシュレートとフレームレートのずれが出発点

リフレッシュレート(Hz)は、モニターが1秒間に画面を書き換える回数です。フレームレート(fps)は、GPUが1秒間に描き上げる画像の枚数です。144Hzのモニターは約6.9msごとに書き換えますが、GPUの描画時間は場面ごとに変わります。このずれをどう処理するかによって、以下の方式に分かれます。

垂直同期(V-Sync):ティアリングを消す代わりに遅延が増える

垂直同期は、GPUがモニターの書き換えが終わるまで次のフレームの表示を待つ仕組みです。書き換えの途中でフレームが切り替わらないため、ティアリングは発生しません。

そのぶん、弱点が2つあります。1つ目は入力遅延です。入力遅延とは、マウスやキーを操作してから画面に反映されるまでの時間を指します。フレームは表示の順番待ちをするため、fpsがリフレッシュレートに届いて待ち行列が詰まると、遅延がさらに大きくなります。2つ目はスタッタリングです。60Hzのモニターで50fpsしか出ないと、1回の書き換えだけ表示されるフレームと、2回分表示されるフレームが混ざり、カクついて見えます。ゲームによっては30fpsまで一気に落ちることもあります。

垂直同期の設定項目

ゲーム内のグラフィック設定では「垂直同期」「V-Sync」「VSync」と表記されます。NVIDIAコントロールパネルでは「3D設定の管理」に「垂直同期」があり、「3Dアプリケーションの設定を使用する」「オン」「オフ」「高速」「アダプティブ」から選べます。「高速」(Fast Sync)は、描き上がったフレームのうち最新のものだけを表示します。通常の垂直同期より遅延は小さいものの、fpsがリフレッシュレートを大きく上回っていないとカクつきが出ます。「アダプティブ」は、fpsがリフレッシュレート以上のときだけ垂直同期をかけます。fpsが下回るとティアリングは出ますが、カクつきは避けられます。AMD Software: Adrenalin Editionでは「垂直リフレッシュを待機」が垂直同期にあたり、「高速」に近い機能として「Enhanced Sync」があります。

VRR・G-SYNC・FreeSync:モニター側がGPUに合わせる

VRR(Variable Refresh Rate、可変リフレッシュレート)は、フレームが届いたタイミングに合わせてモニターが書き換えを行う仕組みの総称です。GPUは待たされず、モニターも途中で書き換えないため、ティアリングと垂直同期由来のカクつきを同時に抑えられます。G-SYNCとFreeSyncは、このVRRを実現するメーカーごとの規格名です。

用語中身主に使うGPU
VRR可変リフレッシュレートの総称。テレビのHDMI 2.1 VRRもこれに含まれる対応GPU全般
G-SYNCNVIDIAの規格。専用モジュール搭載の「G-SYNC」「G-SYNC Ultimate」と、NVIDIAが動作を検証した汎用モニター向けの「G-SYNC Compatible(互換)」があるGeForce
FreeSyncAMDの規格。VESAの標準規格Adaptive-Syncがベース。「FreeSync」「Premium」「Premium Pro」の段階があるRadeon(多くはGeForceでもG-SYNC互換として動作)

VRRの弱点は、対応モニターが必要なことと、効く範囲に限りがあることです。たとえば「48〜144Hz」のモニターでは、fpsが48を下回るとVRRが本来の動きをしなくなります。LFC(低フレームレート補正)に対応したモニターなら、同じフレームを複数回表示して範囲内に収めます。FreeSync Premium以上はLFC対応が条件です。反対に上限の144fpsを超えると、ティアリングが出るか、垂直同期と同じ遅延が発生します。

有効にする場所

まずモニター本体のメニュー(OSD)で「Adaptive-Sync」「FreeSync」などの項目をオンにします。接続は多くの場合DisplayPortが確実です。NVIDIAでは、コントロールパネルの「ディスプレイ」→「G-SYNCのセットアップ」で「G-SYNC、G-SYNC 互換を有効にする」にチェックを入れます。このとき、全画面モードだけで有効にするか、ウィンドウモードでも有効にするかを選べます。AMDでは、AMD Softwareの「ゲーム」→「ディスプレイ」にある「AMD FreeSync」をオンにします。ドライバーのバージョンによって、項目の位置や名称は変わります。

Windows 11では「設定」→「システム」→「ディスプレイ」→「グラフィックス」にある既定のグラフィックス設定に、「可変リフレッシュレート」と「ウィンドウゲームの最適化」があります。これらはVRRに対応していない一部のDirectXゲームでもVRRが働くようにするための補助機能で、ドライバー側の設定の代わりにはなりません。「ディスプレイの詳細設定」にある「動的リフレッシュレート」は主にノートPCの省電力機能で、ゲーム用のVRRとは別物です。同じ画面の「リフレッシュレートの選択」では、144Hzのモニターが60Hzのまま使われていないかも確認できます。

フレームレート上限:VRRの範囲に収めて遅延を抑える

フレームレート上限は、fpsが指定した値を超えないように抑える設定です。ゲーム内では「フレームレート上限」「最大フレームレート」「FPS制限」などと表記されます。NVIDIAではコントロールパネルの「3D設定の管理」に「最大フレームレート」があり、AMDでは「Radeon Chill」の最小・最大FPSを同じ値にすると上限として使えます。

VRRと組み合わせる場合は、上限をリフレッシュレートより数fps低く設定します。fpsがVRRの範囲の上端を超えなくなるので、垂直同期の順番待ちが起きず、遅延を小さく保てます。ゲーム内に上限の設定があれば、多くの場合はそちらのほうが遅延が小さくなります。NVIDIA Reflex対応のゲームでは、G-SYNC、垂直同期、Reflexをすべてオンにすると、リフレッシュレートより低い上限が自動でかかります。

リフレッシュレート別の組み合わせ例

環境VRR垂直同期fps上限の目安
60Hz・VRR非対応(画質・滑らかさ重視)なしオン60
60Hz・VRR非対応(対戦重視)なしオフなし、または高めに設定
144Hz・G-SYNC/FreeSync対応オンドライバー側でオン、ゲーム内はオフ138〜141
240Hz・G-SYNC/FreeSync対応オンドライバー側でオン、ゲーム内はオフ225〜237
120Hzテレビ・HDMI 2.1 VRRオンオン115〜117

60HzでVRRがない場合は、ティアリングと遅延のどちらかを受け入れる必要があります。一人用のゲームなら垂直同期をオンにします。60fpsを安定して出せないときは、画質設定を下げるか「アダプティブ」を試します。対戦ゲームで遅延を嫌う場合は、垂直同期をオフにしてティアリングを許容します。

VRRに対応したモニターでは、表の組み合わせがGeForce環境での定番です。Radeonでも、FreeSyncをオンにしてfpsの上限を範囲内に設定する、という考え方は同じです。240Hz以上のモニターでは1回の書き換えが短いためティアリングが目立ちにくく、対戦ゲームでは垂直同期をオフにする人もいます。どの組み合わせが合うかは、ゲーム、GPU、モニター、ドライバーのバージョンによって変わります。

設定後に症状から原因を切り分ける

まずWindowsでリフレッシュレートがモニターの最大値になっていることを確認します。次にモニターとドライバーの両方でVRRを有効にし、上限を設定してからゲームを起動します。それでもティアリングが出る場合は、fpsがVRRの範囲の外に出ていないか、ゲームがウィンドウモードで動いていないかを確認します。fpsが安定しているのにカクつく場合は、同期の設定ではなくフレームの表示間隔(フレームタイム)の乱れを疑います。NVIDIA Appのパフォーマンスオーバーレイや、AMD Softwareの指標表示でフレームタイムのグラフを確認し、特定の場面でだけ大きく乱れるなら、グラフィック設定やストレージ側に原因を探します。